2023-03-12

デフラグメンテーション

走馬灯を見たことありますか。死の間際によく見るほうの。
高校生のころ、休み時間に友人と会話している最中に、なんの前触れもなく、過去に読んだ小説の内容が超高速で頭の中を駆けめぐった経験があります。あまりにも衝撃的なできごとだったので今でもはっきり覚えていますが、宮本輝の『星々の悲しみ』という短編でした*1。オカルト話はあんまり信じないけど、走馬灯はありえる話なんだなあと体感をもって納得しました。余談、そのあとも同じ体験を求めていろんな小説を読みましたが、結局再現はできませんでした。余談2、小説を読むときに場面をビジュアル化していたんだな、ということに気付かされた体験でもありました。

デフラグメンテーションという言葉を知っていますか。動作が遅くなったWindowsをどうにかしようとGoogleで調べると勧められるほうの。
記憶媒体上で物理的にとぎれとぎれになったデータを整理整頓してアクセスの効率を上げる処理なんですが、人間の脳みそも寝てるときに同じようなことをしてるんじゃないの、という話を見聞きしたことがあります。無意識下で行われているその作業をときたま見てしまうのが"夢"なんじゃないの、っていう。 日々蓄積されていく「私の人生の物語」という隠しファイルに、死を目の前にして脳がバグってアクセスできちゃったのが走馬灯なんじゃないでしょうか。

ああ、もう一回見たいな、走馬灯。
映画を倍速で見る人が増えているみたいだし、流行ると思うんだよな。

トイレ

家のトイレが詰まって、本当に困った。
「この先は、あなたは気にしなくていいですよ!」と過度に抽象化されたインターフェースは、いざその奥で問題が発生したときに、あまりにも無機質な恐怖を与えてくる。
くみ取り式の時代のトイレにはいろいろな妖怪がいたと思うけど、現代の清潔な水洗トイレにはコズミックホラーのような超常的恐怖が潜んでいる。

*1:教科書で『蛍川』を読んで、他の作品が気になって読んだんだよな、たしか。