2023-10-15

焙煎

コーヒーが好きでよく飲んでいる。よく飲んでいるわりにはコーヒーの味がよくわからない。コーヒーのことをもう少し知りたい。その結果として自分でコーヒー豆を焙煎してみようという考えに至った。

自家焙煎のお店とかに行くと、巨大で真っ黒なものものしいマシンが大体置いてある。特別な機械が必要なんだなあという印象が強いが、なんのことはない、どのご家庭にもある手鍋があればコーヒー豆の焙煎は可能だということを知った。Youtubeで。昔は文字情報の方がいいわい、動画なんてまだるっこしいわい、という考えだったが、動画には動画の良さがあることを認めざるを得ない。

生豆を煎ると薄皮(チャフというらしい)が舞うので、台所でやると掃除が大変そう。だから、秋晴れの気持ちのいい日に、カセットコンロを携えて家の裏で焙煎作業を行った。15分ぐらいひたすら鍋を振るので、ザッザッと音を出し続ける作業だ。近所のおばさんが何事かと顔を覗かせた。すいやせん、アッシ、豆を、コーヒー豆を煎っております、というニュアンスを伝えるためのぎこちない微笑を作った。おれが妖怪小豆洗いじゃなくてよかったね。

完成したコーヒー豆は、驚くほど普通にコーヒー豆だった。見た目も味も。友達にも飲んでもらったから、自分で苦労して作ったバイアスは無いはず。拍子抜けの感じもあるけど、本来、焙煎はこの程度の気軽な行為だったのだと思う。昔の人は、自家製でもっといろいろ作っていたはず。そういえば母も梅干しを毎年量産していたな。資本主義の構造の中で、離れ離れにされた手仕事に再会する。ボーイスカウト精神*1

最近はパックご飯のクオリティが上がりすぎてるし、何十年後か、家で炊飯する人はほぼいなくなると思う。その時に「あえて米を炊飯してみた」みたいな動画を見て、おこげに戸惑う人がいるのだろうと思った。*2

*1:ボーイスカウト経験者に出会うと戦友の気分になります

*2:その頃には動画も廃れていて脳に直接データを流し込んでそう